2022.06.28
ライセンス

米国Fate Therapeutics社と固形がんに対するiPS細胞由来CAR-T細胞およびCAR-NK細胞療法の提携拡大

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良 暁、以下「当社」)は、Fate Therapeutics, Inc.(米国、カリフォルニア州サンディエゴ、社長兼最高執行責任者:Scott Wolchko、以下「Fate社」)と、2018年9月に締結したiPS細胞由来のキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞治療薬の創製を目的とする創薬提携を拡大する契約を締結しましたので、お知らせします。

 今回の契約締結により、当社は固形がんに対するiPS細胞由来CAR-T細胞に加えて、CAR-NK細胞療法の選択肢を追加します。また、固形がんに対する二つ目の標的を新たに追加し、当社から当該標的に結合する抗体をFate社に提供します。

 Fate社は引き続き当社から研究資金を受領し、事前に設定した基準を満たすiPS細胞由来のCAR-T細胞およびCAR-NK細胞の製品候補を創製します。当社はその製品候補を全世界で開発・商業化する権利を保有し、Fate社は欧米における共同開発・共同販売のオプション権を保有します。当社は、Fate社に対して臨床開発の進捗に応じたマイルストン、上市後の売上高の目標達成に応じたマイルストン、および上市後の売上高に応じてロイヤルティを支払います。なお、Fate社は本提携から創製される製品の全世界でのすべての製造権を保有します。

 当社の取締役 専務執行役員 研究本部長である滝野 十一は、次のように述べています。「Fate社との創薬提携に基づき、固形がんに有効性を発揮するようデザインされた複数の作用機序を組み入れたiPS細胞由来CAR-T細胞治療薬の製品候補での臨床開発に向けて取り組んでいます。当社は、Fate社との提携の進捗と革新的な製品候補を創製するFate社の実績を高く評価しており、今回、創薬提携を拡大し、固形がんに対する二つ目の標的を追加するとともに、iPS細胞由来CAR-T細胞に加えてCAR-NK細胞を追加し、がん患者さんにとってファーストインクラスの新たな細胞治療法を開発するよう、引き続き、Fate社と協働していくことをうれしく思います。」

 Fate社の社長兼最高執行責任者であるScott Wolchkoは、次のように述べています。「小野薬品との創薬提携では、固形がんの細胞療法分野におけるイノベーションの推進に重点を置いて開発を進めており、最初のiPS細胞由来CAR-T細胞製品候補でこれまでに得られた非臨床データに期待を寄せています。Fate社は、その細胞製品候補に組み込むためのがん特異的抗体の提供をはじめ、本契約におけるこれまでの小野薬品の貢献に感謝しています。今回、小野薬品との創薬提携をさらに拡大し、固形がんに対して二つ目の抗原を標的とする新たな製品候補の非臨床開発を開始することをうれしく思います。」

Fate社のiPSC製品プラットフォームについて

 Fate社独自の人工多能性幹細胞(iPSC)製品プラットフォームにより、他のがん治療との併用を含め、より有効な薬理活性を発揮するために複数回投与するように設計、改変され、汎用性が高く、均質なoff-the-shelf 製剤として細胞製品の大量生産が可能になります。ヒトiPSCは自己増殖能と全ての細胞への分化能を持ち合わせた多能性幹細胞です。Fate社の最初の取り組みは、1回の遺伝子改変でヒトiPSCを設計し、遺伝子改変iPSCをクローン化したマスターiPSC株として選択するというものです。モノクローナル抗体などのバイオ医薬品の製造に使用されるマスター細胞株と同様に、クローン化したマスターiPSC株は、組成が均一で、明確に定義された細胞で、費用対効果の高い方法で患者さんの治療ためのoff-the-shelf製剤として大量生産することができる細胞療法製品を製造するための供給源となります。患者さんまたはドナー由来の細胞を用いた細胞療法製品の生産においては、バッチ間および細胞間のばらつきなど、臨床での安全性および有効性に影響を及ぼす多くの制限があり、またサプライチェーンも複雑でその分費用も高額になることが課題でした。Fate社のプラットフォームでは、そのような多くの制限を克服するよう独自に設計されています。Fate社のiPSC製品プラットフォームは、350件以上の既承認特許と150件の出願中特許からなる知的財産ポートフォリオによって支えられています。

Fate Therapeutics社について

 Fate Therapeuticsは、がん患者さんのためのファーストインクラスの細胞免疫療法の開発に取り組む臨床段階のバイオ医薬品企業です。Fate社は、独自の人工多能性幹細胞(iPSC)製品プラットフォームに基づき、汎用性の高いoff-the-shelf製剤として細胞製品の臨床開発と製造を展開している先駆的な企業です。Fate社のがん免疫療法パイプラインには、iPSC由来ナチュラルキラー(NK)細胞およびT細胞製品のoff-the-shelf 製剤候補が含まれており、これらは免疫チェックポイント阻害剤やモノクローナル抗体などの確立されたがん治療薬と相乗的に作用し、キメラ抗原受容体(CAR)を用いて腫瘍関連抗原を標的とするように設計されています。Fate社は、米国カリフォルニア州サンディエゴに本社を置いています。詳細については、 www.fatetherapeutics.com をご覧ください。