2021.09.14
研究開発

オプジーボとヤーボイの併用療法およびオプジーボと化学療法の併用療法、根治切除不能な進行・再発の食道がんを対象とした併用療法に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良 暁、以下、小野薬品)とブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:ジャン=クリストフ・バルラン、以下、BMSKK)は、本日、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体、オプジーボ®(一般名:ニボルマブ)点滴静注(以下、オプジーボ)とヒト型抗ヒトCTLA-4モノクローナル抗体「ヤーボイ®(一般名:イピリムマブ)点滴静注液」(以下、ヤーボイ)について、根治切除不能な進行・再発の食道がんを対象とした併用療法に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行いましたので、お知らせします。
 また小野薬品は、オプジーボについて、同適応症に対してオプジーボと化学療法との併用療法に係る一部変更承認申請を行いました。

 今回の承認申請は、治療歴のない切除不能な進行性、再発または転移性の食道扁平上皮がん患者を対象に、オプジーボとヤーボイの併用療法およびオプジーボと化学療法*の併用療法を、化学療法 *と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第Ⅲ相試験であるCheckMate -648(ONO-4538-50/CA209648)試験の結果に基づいています。本試験において、あらかじめ計画された中間解析で、オプジーボによる上記2種類の併用療法が、化学療法と比較して、PD-L1発現率が1%以上の患者および全無作為化患者集団において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある全生存期間(OS)の延長を示しました。本試験におけるオプジーボとヤーボイの併用療法およびオプジーボと化学療法の併用療法の安全性プロファイルは、これまでに報告されている各薬剤のものと一貫していました。

  • フルオロウラシルおよびシスプラチンの併用療法(FP療法)

CheckMate -648試験(ONO-4538-50/CA209648)について

 CheckMate-648試験は、治療歴のない切除不能な進行性、再発または転移性の食道扁平上皮がん患者を対象に、オプジーボとヤーボイの併用療法およびオプジーボと化学療法(フルオロウラシルおよびシスプラチンの併用療法)の併用療法を、化学療法(フルオロウラシルおよびシスプラチンの併用療法)と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第Ⅲ相試験です。本試験の主要評価項目は、PD-L1発現率が1%以上の患者において、オプジーボによる2種類の併用療法を化学療法と比較したOSおよび盲検下独立中央評価委員会(BICR)の評価による無増悪生存期間(PFS)です。副次評価項目は、全無作為化患者集団におけるOSおよびBICRの評価によるPFSです。
 オプジーボとヤーボイの併用療法群では、オプジーボ3 mg/kgを2週間間隔およびヤーボイ1 mg/kgを6週間間隔で最長24カ月間とし、病勢進行または忍容できない毒性が認められるまで投与を継続しました。オプジーボと化学療法の併用療法群では、4週間を1サイクルとして、オプジーボ240 mgを2週間間隔、フルオロウラシル800 mg/m²/dayを各サイクルの1日目から5日目まで(5日間)、並びにシスプラチン80 mg/m²を各サイクルの1日目に投与しました。オプジーボの投与は、最長24カ月間とし、病勢進行または忍容できない毒性が認められるまで投与を継続しました。化学療法は、病勢進行または忍容できない毒性が認められるまで継続しました。

食道がんについて

 食道がんは、食道の内面を覆っている粘膜から発生する悪性腫瘍で、大きくなると深層(外側)に向かって増殖します。食道がんは主に扁平上皮がんと腺がんの二つの組織型に分類され、日本では、扁平上皮がんが約 90%を占めています。日本では、年間約2.6万人 1)(全世界では約60.4万人 2))が新たに食道がんと診断され、年間約1.2万人 1)(全世界では約54.4万人 2))の死亡が報告されています。日本では、根治切除不能な進行・再発の食道がんに対しては、フルオロウラシルとシスプラチンの併用療法(FP療法)が一次治療の選択肢の一つとして汎用されています 3)が、OSの延長効果が十分ではなく、新たな治療選択肢が必要とされています。

オプジーボについて

 オプジーボは、programmed death-1(PD-1)とPD-1リガンドの経路を阻害することで身体の免疫系を利用して抗腫瘍免疫応答を再活性化するPD-1 免疫チェックポイント阻害薬です。がんを攻撃するために身体の免疫系を利用するオプジーボは、日本で2014年7月に悪性黒色腫で承認を取得以降、複数のがん腫において重要な治療選択肢となっています。現在、日本、韓国、台湾、中国、米国およびEUを含む65カ国以上で承認されています。
 日本では、小野薬品が2014年9月に「根治切除不能な悪性黒色腫」の治療薬として発売しました。その後、2015年12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」、2016年8月に「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」、2016年12月に「再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫」、2017年3月に「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」、2017年9月に「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌」、2018年8月に「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫」、および2020年2月に「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌」と「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道癌」の承認を取得しました。
 また、尿路上皮がんおよび原発不明がんについて、効能又は効果の追加の承認申請をしており、肝細胞がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、膵がん、胆道がん等を対象とした臨床試験も実施中です。

ヤーボイについて

 ヤーボイは、細胞傷害性 T リンパ球抗原-4(CTLA-4)に結合する遺伝子組換えヒトモノクローナル抗体です。CTLA-4 は、T 細胞の活性化を抑制する調節因子です。ヤーボイは CTLA-4 と結合し、CTLA-4 とそのリガンドである CD80/CD86 との相互作用を阻害します。CTLA-4 が阻害されると、腫瘍浸潤エフェクターT 細胞の活性化と増殖など、T 細胞の活性化と増殖が促されることが明らかになっています。また、CTLA-4 のシグナル伝達が阻害されると、制御性 T 細胞の機能が低下し、抗腫瘍免疫応答を含む T 細胞の反応性が全体的に向上する可能性があります。
 2011 年 3 月 25 日、米国食品医薬品局(FDA)は、切除不能または転移性悪性黒色腫を適応として、ヤーボイ 3 mg/kg 単剤療法を承認しました。現在、ヤーボイは切除不能または転移性悪性黒色腫の治療薬として 50 カ国以上で承認されています。ヤーボイに関しては、複数のがん腫で、幅広い開発プログラムが進められています。日本においては、2015 年 7 月に、根治切除不能な悪性黒色腫を適応とする製造販売承認を取得しました。

小野薬品工業株式会社とブリストル マイヤーズ スクイブの提携について

 2011年、小野薬品は、ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)と締結した提携契約により、当時、小野薬品がオプジーボに関するすべての権利を保有していた北米以外の地域のうち、日本、韓国、台湾を除く世界各国におけるオプジーボの開発・商業化に関する権利を供与しました。2014年7月、小野薬品とBMSは、この戦略的提携契約をさらに拡張し、日本、韓国、台湾のがん患者さん向けに複数の免疫療法薬を単剤療法および併用療法として共同開発・商業化することを合意しました。