2021.07.19
研究開発

ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤「ベレキシブル」 米国において中枢神経系原発リンパ腫患者を対象とした第2相臨床試験を開始

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良 暁、以下、当社)は、ブルトン型チロシンキナーゼ(以下、BTK)阻害剤であるベレキシブル(一般名:チラブルチニブ塩酸塩、開発コード:ONO-4059、以下、ベレキシブル)について、米国において中枢神経系原発リンパ腫(以下、PCNSL)患者を対象とした第2相臨床試験を開始しましたので、お知らせします。

 本試験は、米国においてPCNSL患者を対象にベレキシブルの有効性、安全性および薬物動態を評価する多施設共同非盲検第2相臨床試験(PROSPECT試験:ONO-4059-09)です。本試験の詳細に関しては、以下のウェブサイトhttps://clinicaltrials.gov/(NCT04947319) をご覧ください。

 当社は、今後も世界の多くのPCNSL患者さんに新たな治療選択肢を提供できるよう取り組んでいきます。

中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)について

 PCNSLは、初発時に病変が脳脊髄(眼を含む)に局在する悪性リンパ腫であり、日本におけるPCNSLの年間発症数は約980人と推定 *1、2されています。PCNSL患者が呈する徴候および症状は病変部位により異なり、局所神経障害、神経精神症状、頭蓋内圧上昇に関連する症状、発作、眼症状、頭痛、運動困難、脳ニューロパチー、神経根障害などがあります。
 現在、未治療PCNSL患者には高用量メトトレキサート療法を基盤とする薬物療法およびその後の全脳放射線療法が行われており、一部の患者集団で長期寛解するものの、多くの患者は再発に至ります。また、初回治療が奏効しない難治性患者も存在します。

  1. :Neurol Med Chir (Tokyo). 2017;57(Supplement 1):9-102.
  2. :Jpn J Neurosurg VOL.24 NO.10 2015.10

ベレキシブルについて

 ベレキシブルは、当社が創製した選択性の高い経口BTK阻害剤であり、日本においてB細胞腫瘍患者および自己免疫疾患患者を対象に開発を進めています。B細胞受容体(以下、BCR)シグナル伝達は、B細胞系リンパ球細胞の生存、活性化、増殖、成熟および分化に関する中心的役割を担っており、特にB細胞性非ホジキンリンパ腫(B-NHL)および慢性リンパ性白血病(CLL)では、BCRシグナル伝達経路が恒常的に活性化していることが知られています。ベレキシブルは、BCRの下流に位置するメディエーターであるBTKを阻害することから治療効果が期待されます。

日本において、当社は2020年3月に「再発又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫」の効能又は効果でベレキシブルの製造販売承認を受け、2020年5月に本剤を発売しました。その後、2020年8月に日本で「原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫」の効能又は効果の追加承認を取得しました。がん領域以外では、天疱瘡(第2相試験)および全身性強皮症(第1相試験)を対象とした臨床試験を実施しています。