2021.06.14
研究開発

OPDIVO® 20mg、100mg Inj. 韓国において「胃がん、胃食道接合部がんおよび食道腺がん」並びに「悪性胸膜中皮腫」のファーストライン治療薬として2つの適応拡大の追加承認を同時に取得

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良 暁、以下、当社)は、韓国現地法人である韓国小野薬品工業株式会社(以下、韓国小野)が、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体「OPDIVO® (一般名:ニボルマブ)20mg、100mg Inj.」(以下、オプジーボ)について、6月10日に以下の2つの適応拡大の追加承認を韓国食品医薬品安全処(MFDS)から取得しましたので、お知らせします。

  1. フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む化学療法との併用による「進行または転移性胃がん、胃食道接合部がんおよび食道腺がん」のファーストライン治療
  2. ヤーボイ®(一般名:イピリムマブ)との併用による「切除不能な悪性胸膜中皮腫の成人患者」のファーストライン治療
    *:ヤーボイは、ヒト型抗ヒトcytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4(CTLA-4)モノクローナル抗体です。

≪胃がん、胃食道接合部がんおよび食道腺がんに対する適応拡大について≫

 今回の承認は、当社とブリストル マイヤーズ スクイブ(NYSE:BMY、以下、BMS)が未治療の進行または転移性胃がん(GC)、胃食道接合部がん(GEJC)および食道腺がん(EAC)患者を対象に、オプジーボと化学療法の併用療法を化学療法と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第Ⅲ相臨床試験(CheckMate-649)の結果に基づいています。本試験では、主要評価項目であるcombined positive score(CPS)が5以上のPD-L1陽性の切除不能な進行または転移性GC、GEJCおよびEAC患者のファーストライン治療において、オプジーボと化学療法の併用療法が、化学療法単独と比較して、全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)で統計学的に有意な改善を示しました。オプジーボと化学療法の併用療法は、割り付けられた全ての患者集団でも統計学的に有意なOSのベネフィットを示しました。オプジーボと化学療法の併用療法の安全性プロファイルは、これまでに報告された個々の治療のものと一貫していました。

CheckMate-649試験について

 CheckMate-649試験は、未治療のヒト上皮細胞増殖因子受容体2型(HER2)陽性以外の進行または転移性胃がん、胃食道接合部がんおよび食道腺がんの患者を対象に、オプジーボと化学療法の併用療法を化学療法と比較評価した多施設共同無作為化非盲検第Ⅲ相臨床試験です。オプジーボと化学療法の併用療法群の患者は、オプジーボ240 mgと5-フルオロウラシル、ロイコボリンおよびオキサリプラチン(FOLFOX)を2週間間隔、もしくはオプジーボ360 mgとカペシタビンおよびオキサリプラチン(CapeOX)を3週間間隔で投与を受けました。化学療法群の患者は、FOLFOXを2週間間隔、もしくはCapeOXを3週間間隔で投与を受けました。投与は、病勢進行もしくは忍容できない毒性が認められるまで、または患者が同意を撤回するまで、最長2年間継続されました。本試験の主要評価項目は、PD-L1 combined positive score(CPS)が5以上の患者における全生存期間(OS)および盲検下独立中央評価委員会(BICR)の評価による無増悪生存期間(PFS)です。主な副次評価項目は、PD-L1 CPSが1以上および割り付けられた全ての患者におけるOSおよびPFS、ならびにPD-L1 CPSが 1以上および 5以上の患者と割り付けられた全ての患者におけるBICRの評価による奏効率(ORR)でした。

胃がん、胃食道接合部がんおよび食道線がんについて

 胃がん、胃食道接合部がんおよび食道腺がんは、上部消化器がんに分類されます。

  • 胃がんは、韓国では年間約28,000人が新たに診断されており、胃がんによる死亡者数は、年間約7,500人と推定されています 1。食道と胃がつながる消化管領域である胃食道接合部に発生するがん腫など、複数のがんを胃がんとして分類することができます。韓国では、HER2陰性の治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対する一次化学療法の標準治療は過去10年間ほとんど進展がなく、本疾患の患者さんに新しい治療選択肢が必要とされています。
  • 食道がんは、韓国では年間約2,600人が新たに診断され、年間約1,500人が亡くなられています 1。食道がんは、食道の内面を覆っている粘膜から発生する悪性腫瘍で、大きくなると深層(外側)に向かって増殖します。食道がんは主に扁平上皮がんと腺がんの二つの組織型に分類され、韓国では、扁平上皮がんは食道がんの91.5%、腺がんは2.5%を占めています 2
    1. Globocan 2020. Available at: https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/populations/410-korea-republic-of-fact-sheets.pdf
    2. National Cancer Information Center in Korea: https://www.cancer.go.kr/

≪悪性胸膜中皮腫への適応拡大について≫

 今回の承認は、未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫患者を対象に、オプジーボとヤーボイの併用療法をプラチナ製剤を含む標準治療の化学療法と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第Ⅲ相臨床試験(CheckMate-743試験)であらかじめ計画されていた中間解析の結果に基づいています。本解析において、オプジーボとヤーボイの併用療法は、化学療法と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な延長を達成しました。本試験で認められたオプジーボとヤーボイの併用療法の安全性プロファイルは、本併用療法でこれまでに認められているものと一貫していました。

CheckMate -743試験について

 CheckMate -743試験は、未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫患者(n=605)を対象に、オプジーボとヤーボイの併用療法を、化学療法(ペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用療法)と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第Ⅲ相臨床試験です。本試験では、患者303例がオプジーボ3 mg/kgを2週間間隔で、ヤーボイ1 mg/kgを6週間間隔で投与する治療群に無作為化され、投与は病勢進行または忍容できない毒性が認められるまで、最長24カ月間継続されました。患者302例がシスプラチン75 mg/㎡またはカルボプラチンAUC 5とペメトレキセド500 mg/㎡の併用療法を、病勢進行または忍容できない毒性が認められるまで、21日間を1サイクルとして、最大6サイクル投与する治療群に無作為化されました。本試験の主要評価項目は、全無作為化集団におけるOSでした。主な副次評価項目は、奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)および無増悪生存期間(PFS)でした。

悪性胸膜中皮腫について

 悪性胸膜中皮腫は、胸腔表面を覆う中皮やその下の結合組織の未分化な間葉細胞に由来する悪性腫瘍です。その発症原因は職業環境及び生活環境から吸入した石綿(アスベスト)との関連が高く、石綿曝露から約30~50年という非常に長い期間を経て発症することが知られています。悪性胸膜中皮腫に対する標準治療としては、ペメトレキセドとシスプラチンの併用療法が行われています。今回の承認により、オプジーボとヤーボイの併用療法が悪性胸膜中皮腫の患者さんにとって新たな治療選択肢になるものと期待されています。

オプジーボについて

 オプジーボは、programmed death-1(PD-1)とPD-1リガンドの経路を阻害することで身体の免疫系を利用して抗腫瘍免疫応答を再活性化するPD-1免疫チェックポイント阻害薬です。がんを攻撃するために身体の免疫系を利用するオプジーボは、日本で2014年7月に悪性黒色腫で承認を取得以降、複数のがん腫において重要な治療選択肢となっています。現在、日本、韓国、台湾、中国、米国およびEUを含む65カ国以上で承認されています。
 日本では、2014年9月に根治切除不能な悪性黒色腫の治療薬として発売され、その後、2015年12月に切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、2016年8月に根治切除不能又は転移性の腎細胞がん、2016年12月に再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫、2017年3月に再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん、2017年9月にがん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃がん、2018年8月にがん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫、および2020年2月にがん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がんおよびがん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道がんの承認を取得しました。
 また、肝細胞がん、尿路上皮がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、膵がん、胆道がん等を対象とした臨床試験も実施中です。

小野薬品工業とブリストル マイヤーズ スクイブの提携について

 2011年、小野薬品は、ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)と締結した提携契約により、当時、小野薬品がオプジーボに関するすべての権利を保有していた北米以外の地域のうち、日本、韓国、台湾を除く世界各国におけるオプジーボの開発・商業化に関する権利を供与しました。2014年7月、小野薬品とBMSは、この戦略的提携契約をさらに拡張し、日本、韓国、台湾のがん患者さん向けに複数の免疫療法薬を単独療法および併用療法として共同開発・商業化することを合意しました。

韓国小野薬品工業株式会社について

 韓国小野薬品工業株式会社(所在地:韓国・ソウル特別市)は、2013 年12 月に、当社の100%出資の現地法人として設立されました。オプジーボをはじめとする抗がん剤などの一部のスペシャリティー製品について自社販売を行っています。韓国市場において、当社製品のさらなる浸透に努め、自社で生み出した製品の開発、販売に取り組んでいます。