2021.04.14
研究開発

オプジーボ®(一般名:ニボルマブ)点滴静注 原発不明がんに対する効能又は効果の追加に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請

 小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良暁)は、本日、ヒト型抗ヒト PD-1モノクローナル抗体、オプジーボ®(一般名:ニボルマブ)点滴静注(以下、オプジーボ)について、原発不明がんに対する効能又は効果の追加に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請を行いましたので、お知らせします。

 今回の承認申請は、近畿大学病院の主導の下、原発不明がんを対象にオプジーボを評価した医師主導治験(NivoCUP試験)の結果に基づいています。本試験において、主要評価項目である化学療法既治療例における奏効率(中央判定)は22.2%(95%信頼区間:11.2-37.1)であり、信頼区間の下限値が事前に設定した閾値奏効率5%を超えたことから、本試験の主要評価項目を達成しました。また、治療歴を問わない全体集団における奏効率(中央判定)は21.4%(95%信頼区間:11.6-34.4)であり、治療歴を問わずオプジーボの抗腫瘍効果が示されました(1)

 原発不明がんは、十分な検索にも関わらず原発巣が不明で、組織学的に転移巣と判明している悪性腫瘍と定義されています(2)。原発不明がんは診断時に既に進行・転移している病態であり、複数臓器に転移が認められる患者が全体の半数以上を占め(3)、生存期間の中央値は6~9カ月(4)、5年生存率は2~6%(5),(6)と極めて予後が悪く、生命に重大な影響がある重篤な疾患とされます。
 原発不明がんの国内の患者数は約3,000~13,680人と推定されており(7),(8)、推定される原発巣に準じた特異的な治療の適応となる予後良好群と、治療法が確立されていない予後不良群(原発不明がんの80%)に大別されます(2)。この予後不良群に対する治療は薬物療法が主体となりますが、原発不明がんに対して国内外で承認された薬剤はなく、標準治療が未だ確立されていないため、薬剤の開発が切望されています。
 なお、オプジーボは、厚生労働省より、2021年3月11日、原発不明がんを効能又は効果とする希少疾病用医薬品の指定を受け、優先審査の対象となっています。

参考文献

  • Tanizaki J et al. J Clin Oncol. 2020;38:Issue 15 suppl 106-106.
  • 日本臨床腫瘍学会編. 原発不明がん診療ガイドライン 改訂第2版. 2018.
  • Seve P et al. Cancer. 2006;107:2698-705.
  • Pavlidis N et al. Eur J Cancer. 2003;39:1990-2005.
  • Greager JA et al. J Surg Oncol. 1983;23:73-6.
  • Altman E et al. Cancer. 1986;57:120-4.
  • 厚生労働省. 平成29年患者調査. 2019.
  • 厚生労働省健康局がん・疾病対策課. 平成29年 全国がん登録罹患数・率報告. 2020.

NivoCUP 試験について

 本試験は、化学療法既治療又は未治療の原発不明がん患者(予後不良群)を対象に、オプジーボの有効性及び安全性を検討することを目的として近畿大学病院を中心に実施された医師主導による非盲検第Ⅱ相臨床試験です。本試験の主要評価項目は、化学療法既治療例における奏効率(中央判定)です。副次評価項目は、奏効率(治療歴を問わない全体集団)、全生存期間、無増悪生存期間等です。

オプジーボについて

 オプジーボは、programmed death-1(PD-1)とPD-1リガンドの経路を阻害することで身体の免疫系を利用して抗腫瘍免疫応答を再活性化するPD-1 免疫チェックポイント阻害薬です。がんを攻撃するために身体の免疫系を利用するオプジーボは、日本で2014年7月に悪性黒色腫で承認を取得以降、複数のがん腫において重要な治療選択肢となっています。現在、日本、韓国、台湾、中国、米国およびEUを含む65カ国以上で承認されています。
 日本では、2014年9月に根治切除不能な悪性黒色腫の治療薬として発売され、その後、2015年12月に切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、2016年8月に根治切除不能又は転移性の腎細胞がん、2016年12月に再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫、2017年3月に再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん、2017年9月にがん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃がん、2018年8月にがん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫、および2020年2月にがん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸がんおよびがん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道がんの承認を取得しました。
 また、食道胃接合部がん、肝細胞がん、尿路上皮がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、膵がん、胆道がん等を対象とした臨床試験も実施中です。

ブリストル マイヤーズ スクイブと小野薬品工業の提携について

 2011年、小野薬品は、ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)と締結した提携契約により、当時、小野薬品がオプジーボに関するすべての権利を保有していた北米以外の地域のうち、日本、韓国、台湾を除く世界各国におけるオプジーボの開発・商業化に関する権利を供与しました。2014年7月、小野薬品とBMSは、この戦略的提携契約をさらに拡張し、日本、韓国、台湾のがん患者さん向けに複数の免疫療法薬を単剤療法および併用療法として共同開発・商業化することを合意しました。