平成10年5月14日  

米国 ジェネティクス・インスティチュ−ト社との共同研究についての中間報告

 ジェネティクス・インスティチュ−ト社(アメリカンホームプロダクツ社の100%子会社)と小野薬品は、新しい医薬品の創製を目指しここ数年来遺伝子領域で共同研究を続けてきた。本共同研究では既に多くの新しい遺伝子を見出しており、現在、個々の蛋白質の生理作用を解明するという新しい段階に来ている。これら遺伝子のうち、幾つかがヒトの疾患や生理作用に関与していることがわかってきたので、両社の提携は、近い将来、これらを医療に応用する研究へと発展していくことになる。
 これらの得られた新規遺伝子がコ−ドする蛋白質の1つに生体内物質であるSDF-1と呼ばれるものがあり、HIV(エイズを引き起こすウイルス)感染に関与していることがわかってきた。
 エイズは感染したHIVの増殖により免疫担当細胞が破壊されることによって起こる免疫不全症である。感染はHIVが細胞表面にある受容体と呼ばれる分子と結合したのち細胞内に侵入することによっておこる。感染の第一ステップである生体内受容体の一つにFusin(フゥシン)というものがり、SDF-1はこのFusinと強く結合する性質を有している。試験管の実験では、SDF-1にHIV増殖阻害能のあることが確認されており、SDF-1がHIV感染を阻止する新しい治療法となる可能性が示されている。
 SDF-1は既に処方されている逆転写酵素阻害剤やHIV蛋白分解酵素阻害剤といったエイズ治療薬とはその作用機作が全く異なることから、単独あるいは既存療法との併用によりHIVをブロックする全く新しい手段を提供する可能性がある。
 SDF-1についての最善の開発方針を両社で検討中である。