平成12年6月19日

注射用エラスポールの国内申請状況について

参考:本文の解説を掲載しております
注射用エラスポールは「全身性炎症反応症候群に伴う急性肺障害」の適応症で製造承認申請しており、 今年中の許可を見込んでおりました。しかし、5月30日の面接審査会にて「急性呼吸不全を対象として海外で実施されている臨床試験の方法に準じた試験を追加して下さい」 との指摘を受けました。

本剤の適応症である「全身性炎症反応症候群に伴う急性肺障害」は、呼吸機能が急速に悪化する重篤な疾患で、患者さんの約30%は亡くなります。 現状、人工呼吸器により機械的に呼吸機能を補なう以外、治療法はありません。本剤はこのような患者さんの呼吸機能を改善し、人工呼吸器の装着期間を短縮し、 集中治療室から早く退出させることができる薬剤です。本剤の臨床試験は、わが国の医療現場の事情を勘案した試験方法で実施されており、 本剤の有効性や治療的意義については、当局との間に見解の一致をみております。しかし、当局は世界初の急性肺障害の治療薬として承認するためには、 グローバルスタンダードに準拠した試験成績が必要であるとの見解でした。

今回の指摘は、本剤の有効性や治療的意義について言及しているものではなく、日本と海外での臨床試験を実施する医療現場の事情の違いを示したものです。 弊社といたしましては、「日本から発する世界初の画期的新薬」との位置づけを意識し、当局の指導下に行われる小規模試験を受け入れることとしました。 このことにより、本剤の上市は1〜1.5年程遅れる見通しとなりました。なお、イーライリリー社への導出を含め、当社の海外展開には何ら影響はありません。
小野薬品工業株式会社
広報室

解説

1.導出先であるリリー社への対応について
5月30日の面接審査会において、「許可するには、追加臨床試験が必要です」との当局の指摘を受けました。 6月2日に早速米国リリー本社を訪問し、詳細をお伝えしました。その際、リリー社からエラスポール導入の方針に変更はないこと、 および、日本での承認取得に協力したいとの申し出をいただいております。
リリー社とは、この度、本剤の開発・製造・販売に関して正式にライセンス契約を締結いたしました。

2.国内での承認の見込みについて
本剤の有効性や治療的意義については当局との間に見解の一致をみております。追加試験に1年程度の期間を要すると思いますが、 間違いなく承認されると見込んでいます。

3.追加臨床試験の内容について
海外と国内の臨床試験では主評価項目が異なります。国内では、呼吸機能の改善を主評価項目として臨床試験を実施しました。 今回、海外と同じ人工呼吸器からの離脱を主評価項目として、追加臨床試験を行いますが、オープン試験で症例数20〜30例という小規模試験を計画しています。
ただし、米国で最近実施された試験では、人工呼吸器からの離脱基準を事前に取り決めて実施されておりますので、追加臨床試験は可能な限りこの米国の試験に準拠して行います。

4.国内の治験で人工呼吸器からの離脱を主評価項目とした臨床試験を実施しなかった理由について
弊社が第III相試験を開始した当時は、世界的にも人工呼吸器からの離脱を主評価項目とした臨床試験は行われていませんでした。米国でこのような臨床試験が実施されるようになったのは最近です。
我々は当時考え得る最良の方法として、呼吸機能の改善を主評価として臨床試験を実施しました。人工呼吸器からの離脱は、わが国の医療現場で日常実施されている方法を採用し、副次的評価項目としました。

5.海外の臨床試験と国内で実施した臨床試験内容の相違について
米国では呼吸療法士が人工呼吸器の管理を行っております。また、NIHが音頭を取り、人工呼吸器の使い方を改善すべく検討が進められ、使用基準を作る方向に向かっています。 このような背景があって、最近統一した基準での治験が米国では可能になったわけです。
一方、国内では外科、内科、麻酔科の先生方がそれぞれ良いと思われる方法で人工呼吸器を管理されていますので、使用基準が統一される状況にありません。
しかし、「日本から生み出す世界初の急性肺障害治療剤」という観点からグローバルスタンダードに可能な限り準拠した成績を補足的に取って下さいというのが当局の考え方です。 我々はリクエストに応じて、可能な限り海外基準に準拠した形で試験を追加したいと考えております。

6.国内上市時期の遅れによる今期及び中期的業績への影響について
平成12年中の許可を目標としておりましたが、業績の寄与は来期以降と考えており、今期の売上げ見通し1290億円(対前期比2.3%アップ)の中には入れておりませんでした。従って、今期の業績への影響はありません。
一方、中期的業績への影響については、当初の予定に対して1年余りの遅れで承認を得られるものと思いますので、軽微なものに止まるものと考えております。